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変化の時代、活躍するのは「元お笑い芸人」。『パークアンドパークス』加瀬裕規さん 〜コロナ禍で元芸人を採用した企業が“挫折経験のある人材”に期待する理由とは?〜

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コロナ不況のなか、「元芸人」を新たに雇用した企業があります。ナッツやドライフルーツの輸入販売を手がける株式会社デルタインターナショナル。代表商品「ロカボナッツ」をスーパーなどで目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

2020年4月、当社に入社したのは、昨年11月にお笑いコンビ「パークアンドパークス」を解散し、6年間の芸人活動に終止符を打った加瀬裕規さん、31歳。芸人時代に培った行動力やコミュニケーション力を武器に、海外戦略上の重要イベントを取り仕切るなど、営業として大活躍しています。

デルタインターナショナルはなぜ、「元芸人」の加瀬さんの採用を決めたのでしょうか。そして加瀬さんはどのように就職活動を進め、社会人の切符を手にしたのでしょうか。芸人ネクストの中北を交え、加瀬さんご本人とデルタインターナショナル営業本部 本部長 執行役員の枝澤さん、営業本部 販売部 マーケティング部 ジェネラルマネジャーの村井さんに振り返ってもらいました。


<プロフィール:加瀬裕規さん>
大学を中退し、2012年4月太田プロエンタテインメント学院に入学。太田プロと契約し、約6年間にわたりお笑いコンビ「パークアンドパークス」として活動。ライブやMCのほか、タレント養成学校のトーク講義の講師などを務める。2019年11月にコンビを解散し、2020年4月株式会社デルタインターナショナルに入社。


「30歳になる頃には、テレビで活躍しているはずだった」

──加瀬さんはいつ頃から芸人になりたいと考えるようになったのですか?

加瀬さん:子どもの頃から芸人を目指していたわけではないんです。ただ、お笑いは大好きだったので、『M-1グランプリ』などのネタ番組はよく見ていました。小学校から高校まで、休み時間にはいつも友達とふざけ合っていましたね。

お笑いの道に進もうと決めたのは大学時代です。お寿司のデリバリーのバイトで、お笑いをやっていた同い年の元相方と仲良くなって。話を聞くと、もう一度お笑いをやりたいと言うんです。

その彼からは、本当に熱心にお笑いを誘われました。まずはカフェに呼ばれて。そのときは芸人になるつもりなんてなかったので、断ったんです。ところがしばらくすると、家のポストに「コント入門」「漫才入門」の本が投函されていて(笑)。「何これ?」と彼に聞くと、「お笑いやらなくてもいいから読んどいて!」と。

そんな風に繰り返し誘われるうちに、だんだんお笑いがやりたくなってきたんです。結局、大学を中退し、彼とコンビを組んで養成所に入りました。

──熱心に誘われたとはいえ、大学を中退してお笑いの道に進むとは、大きな決断でしたね。

加瀬さん:そうですね。実は内心、将来は有名人になりたいとか、お金持ちになりたいと思ってたんです。「お笑いで成功すればお金持ちになれるかもしれない。これはチャンスだ!」と思って飛び込みました(笑)。

(2020年4月、デルタインターナショナルに入社した加瀬裕規さん)

──なるほど(笑)。芸人時代の活動の中で、一番印象に残っている出来事は何ですか?

加瀬さん:芸人5年目のときに、フジテレビが毎年夏にお台場で開催する大型イベントで、一般の方がクイズ番組に参加した気分を楽しむ企画のMCを1ヶ月間担当したんです。これを盛り上げるのがすごく難しくて……。最初は問題を出して「正解」「不正解」と進めるだけだったので、全然場が温まらなくて。

でも、1ヶ月間で10回ぐらい同じ仕事があったので、少しずつ工夫していきました。ある日、お客さんに「今日の意気込みは?」と短くインタビューしてからクイズを始めると、その人が間違えただけで会場に笑いが起きたんです!「〇〇県から来ました、今日は絶対に正解します!」って、あんなに意気込んでたのに〜と。出演する人がどういう人なのかを紹介してからクイズに答えてもらうと、見ている側に感情が生まれるんだと学びました。

それからは会場の周りに徐々に人が集まってくるようになって、最後は100人ぐらいの拍手に包まれながら役目を終えることができました。短い期間でしたが、成長を感じられて嬉しかったですね。自分が前面に出るのではなく、裏方として場を盛り上げるのが好きになりました。

──MCの仕事を通じて、場の空気を作る力が身についたのですね。その後芸人を辞めたのは、何がきっかけだったのですか?

加瀬さん:芸人6年目のときに、毎年出場していた大会に一回戦で落ちてしまったんです。この大会は1年目のときに、すでに2回戦に進出できていました。6年かけて後退してしまった現実を突きつけられたときは、本当に応えましたね……。心が完全に折れてしまい、立ち直れませんでした。

でも実は、大会の前からいつ解散してもおかしくない状態だったんです。30歳になったらもっとテレビに出て、ひな壇に座ってるイメージでいたのに、それとはかけ離れた状態でした。「そろそろやばいんじゃないか」という雰囲気は二人の間にあったのですが、お互い言い出せなくて。

そんな中、解散を切り出してくれたのは相方でした。話し合いの末コンビを解消し、去年の11月に太田プロとの契約を終了。6年間の芸人生活に幕を閉じました。

社会人として働くために、芸人ネクストで「上から目線」の話し方を改善

──就職活動はどのように進めたのですか?

加瀬さん:このままダラダラと過ごしてしまうのが目に見えていたので、すぐに情報収集をはじめました。まずは芸人を辞めた人がどんな仕事に就いているか調べようと思って、「芸人」「就職」「転職」のキーワードで検索したら、芸人ネクストを見つけたんです。元芸人の就職に特化しているサービスだと知り、すぐに問い合わせました。

──他の転職サービスは利用しなかったのですか?

加瀬さん:はい。人とコミュニケーションがとれる仕事がしたいなと考えていたのですが、元芸人が普通の転職サービスで希望の仕事を紹介してもらうのは難しいだろうなと思ったので。

芸人ネクストの中北さんは、思いがけずしっかりした方でした。「本当に元芸人ですか?」と思ったのが第一印象ですね(笑)。でも喋り始めると、話の節々から芸人らしさが感じられて安心しました。

中北:加瀬君こそ、いい意味で「芸人ぽくない人だな」と思いましたよ。元芸人の方って、話す内容がふわっとしている方が多いのですが、加瀬さんは自分の行動をきちんと振り返り、どんな経験をしたのか、なぜそういう行動を取ったのかを論理的に説明できる方でした。すでにかなり社会化されていたので、問題なく就職できるだろうと思い、最初の面談で「必ずあなたは良い会社に入れますよ」とお伝えしました。

加瀬さん:そのときは、一体何の根拠があってそう仰るのかわからなかったのですが(笑)、中北さんが力強く背中を押してくれたので、芸人ネクストの力を借りてみようと思いました。

──中北とのやり取りで、特に印象に残っていることはありますか?

加瀬さん:話し方が「上から目線」に見られがちなので、直した方がいいと指摘されたことですね。

中北:加瀬君の喋り方は、気をつけないと相手に誤解を与えてしまう可能性がありました。何かを教わったときに、「そうなんですね!」というような“教わる立場”の反応ではなく、「たしかにそういう意見もありますよね」という“指導者の立場”の反応だったので、相手を見下しているように見えてしまいがちだったんです。しかも身長が高めなので、相手に威圧感を与えやすい。このままでは面接がうまくいかないだけでなく、職場でもかわいがってもらうのは難しいと感じ、謙虚な振る舞いを身につけてもらいました。

加瀬さん:中北さんは「今日も上から目線だね」と僕のことをいじってくれて(笑)。中北さんとのやりとりを通じて、話し方だけでなく、自分に自信を持ちすぎてしまっていたことにも気付かされました。

それから、話す内容も直しました。最初は相手がどういう意図で質問しているのかを理解せず、とにかく自分の話したいことだけを一方的に話してしまう状態だったんです。

中北:加瀬君はサービス精神が旺盛なので、「こんなことも言ったらいいんじゃないか?」と、つい余計な話をしてしまいがちでした。ビジネスにおいてはそうしたコミュニケーションは無駄なので、自分に求められていることを考え、相手の立場に立った発言をするよう徹底してもらいました。

──就職のためとはいえ、話し方や話す内容について指導されるのは辛くありませんでしたか?

加瀬さん:辛かったです。中北さんの指摘は全部直球で、全然オブラートに包んでくれないので(笑)。でも、芸人時代にはネタ見せで9割方ボコボコにされていましたから全然耐えられましたし、何より中北さんの「何としても就職させよう」という熱意を感じたので、最後まで頑張れました。その結果、選考を受けた6社中3社から内定をいただき、最終的にデルタインターナショナルへの就職が決まりました。

中北:2分の1の確率で内定が出たなんて素晴らしい。最初に思った通り、加瀬さんはすごい方なんですよ。

ツッコミから“愛されキャラ“に。いじられるのは、成長した証拠

──加瀬さんの面接を担当し、現在の上司でもあるデルタインターナショナルの枝澤さんと村井さんにお伺いします。お二人は「元芸人」の加瀬さんに何を期待して採用したのでしょうか?

村井さん:1つは、柔軟性ですね。これからの時代は変化に対応する力が求められますが、社会経験のない学生や、成功体験ばかりを積み重ねてきた人は、前例のない出来事にぶつかると固まってしまいがちです。しかし、20代で大きな挫折を味わっている加瀬さんならば、それを糧にどんな状況でも「タフ」に乗り越えていける力があるだろうと思いました。

もう1つ期待したのは、素直さです。加瀬さんが面接で「次の目標はまだ見つけられていないので、この会社でこれから見つけていきたい」と話してくれたのが印象に残っています。自分の気持ちを正直に伝えられる素直さがあれば、この先きっと伸びていくだろうと思えましたね。総じて、不安よりも期待の方が大きかったです。

(デルタインターナショナル営業本部 販売部 マーケティング部 ジェネラルマネジャー 村井さん)

枝澤さん:私は最終面接を担当したのですが、加瀬さんは非常にしっかりとした受け答えをしていました。ちょっとひねった質問をすると、しどろもどろになってしまう候補者も多いなか、加瀬さんは何を聞いても自分なりの答えを明確に返してくれた。さすがコミュニケーション力があるなと感じましたね。芸人時代はツッコミだったそうですが、社内ではいじられキャラで浸透しているのが不思議ですが(笑)。

加瀬さん:会社の皆さんからいじってもらえるのは、本当にありがたいです。自分の中ではすごい成長だと思っています。もし今まで通り「上から目線」のまま入社していたら、こんな風に構ってもらえなかったはずです。中北さんは面接だけでなく、入社後のことも考えて指導してくれたんだなと改めて感謝しています。

──加瀬さんの存在が職場で受け入れられているようで何よりです。加瀬さんには今どんな仕事を任せているのですか?

村井さん:営業として、商談や資料の作成などをお願いしています。最初は先輩のサポートから始めて、今は徐々に一人でやる割合を増やしている段階です。

弊社の主要な取引先であるスーパーの中で、一番売り上げが高いのは青果売り場なのですが、加瀬さんにはまさにその青果売り場を担当してもらっています。提案がうまくいけば成果の出やすい、やりがいのある部門なので、ぜひ活躍してもらいたいですね。野菜を売る方って声が大きい方が多いので、そこは加瀬さんも負けないかなと(笑)。

──適性を配慮した配属をしてくださったのですね。入社して約半年が経ちましたが、加瀬さんの働きぶりを見てどのように感じていますか?

枝澤さん:コミュニケーション力に加えて、すぐに現場に足を運ぶ行動力があります。弊社では現在、海外戦略の一つとして羽田空港でロカボナッツフェアをやっているんです。かなりスケジュールがタイトな案件でしたが、加瀬さんはとてもいい動きをしてくれました。今もフェアが順調に進んでいるのは、加瀬さんのおかげですよ。

(デルタインターナショナル営業本部 本部長 執行役員の枝澤さん)

加瀬さん:
そんな風に言っていただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます! 入社する前は会社って「ルールに沿って決められたことをする場所だ」というイメージがあったんです。でも、デルタインターナショナルはとても自由で、何事も自分で考えてやらせてもらえる。全然息苦しくはないですし、とても働きがいがあります。

滑っても立ち上がり続けた経験は、絶対に自分を裏切らない

──そもそも、デルタインターナショナル様は、なぜ「元芸人」を採用してみようと考えたのでしょうか?

村井さん:中北さんの想いに共感したんです。芸人を一生懸命やってきたのに、就職で壁にぶつかっている方を未来に導こうとする志が素晴らしいなと。我々はドライフルーツやナッツの輸入販売を通じて、持続可能な世界に貢献するという理念を掲げています。中北さんとフィールドは異なりますが、お互いに通じ合うものがあるなと思いました。

枝澤さん:世の中いくらでもチャンスはありますが、本人が諦めてしまうと手にすることはできません。中北さんは「夢諦めたけど人生諦めてない」という芸人ネクストのスローガンを自ら体現し、後輩に背中を見せている。その生き方に大変共感しました。芸人ネクストが社会に与える影響は大きく、私たちが得るものも大きいです。

──壁にぶつかった人が新しい人生を歩める社会を一緒に築いてきたいですね。最後に加瀬さんから、最後に転職を検討している芸人の方へメッセージをお願いします。

加瀬さん:会社で働き始めて、芸人として培ってきたことが生かされる場面ってたくさんあるなと思いました。人と違う切り口で物事を考える視点は、今の仕事にそのまま役立っていますし、将来的にはゼロから新しい仕事を作り出して、会社に貢献できるような働きをしていきたいです。

就職になかなか踏み出せない芸人の方は多いと思いますが、芸人時代は失敗を恐れずに何百回も挑戦の場に飛び込んだと思います。滑っても立ち上がり続けた経験は決して自分を裏切らないので、失敗を恐れずに飛び込めば、きっと次につながるはずです。ぜひ頑張ってください!

(取材、文、写真・一本麻衣

 

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