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インタビュー

元お笑い芸人を「成果が出せるビジネスマン」に育てた上司がしたことは? 〜事例②元上司:田中大裕さんの場合〜

常識に捉われず全く違ったアプローチで成果をあげることが出来る


 

田中大裕さん 34歳

大学卒業後、人材育成・組織開発コンサルティング企業へ。
主に上場企業の若手社員のリーダーシップ開発に取り組む。
その後、人材開発と事業開発は一体不可分との考えから、ビジネスアクセラレーション企業へ。
現在はコンサルタントとして、人材開発と事業開発を通じた新たな価値創造のエコシステムづくりに従事。

―本日はどうぞよろしくお願いします。
 さて、さっそくですが、中北さんとお会いした時の最初の印象はどんな感じでしたか?

田中さん(以下、敬称略):最初は部署が違っていて、同じ部署になったのは、中北くんが入社して3年目くらいだったと思います。同じ部署になって、最初に印象的だったのが本人というより、周りの評価。中北くんの周りにいる人から、「良い話」と「悪い話」の両方を聞いていて、こんなに評価が分かれる人は初めてだったので、いい意味で一緒に仕事するのが楽しみ、面白そうだなと思っていました。

中北:ちなみに「良い」と言う人と「悪い」という人の意見はどんなものでしたか?

田中:「中北君はちゃんと考えているから、続ければ成果が出る」と言っている人がいる一方で、詳しくは聞いてないけど「やっぱり芸人出身だから難しいよね」という人は正直いましたね。

過去の成功パターンに当てはめてはダメ


―田中さんが、元お笑い芸人の中北さんの上司として接するときに何を意識していましたか?

田中:意識する前に印象的なことがありました。
同行したアポイントメントの帰り道に、東新宿の交差点に差しかかかったところで、中北くんが今度、一人で別のお客様に提案に行くのだけれど、「どんな風にソリューションを紹介していいかわからないから、今この場で5分間トークをしてもらい、それを録音させてほしい。完コピ(=完全コピー)するから」と言われました。

仕方がないので大きな交差点の端っこで立ったまま5分くらいしゃべりましたね。私は、人の真似より自己流が好きなタイプなので、完コピという話がすごいカルチャーショックで(笑)。でも、それで結局、中北君はそのお客様から受注してきました。それで、勘所がいいなあと。

最初の質問に戻ると、自分や自社の常識、過去の成功パターンに当てはめちゃいけないなと思いました。あまりこちらで「これが良い」って決めると逆に活躍の幅を狭めてしまう、とその一件で強く学びました。

―「お笑い芸人」という先入観はありましたか?

田中:あまり無かったですねお笑い芸人というのは、性別や学歴、前職、出身地等と同じただのラベルだと思っているので、芸人だからどうこうっていうのは無かったです。

お客様ではなく一人の人間として接する


―お笑い芸人ならではの能力は何だと思いますか?

田中:中北くんを見て思うことは2つあります。

1つ目が、常識にとらわれないこと。会社で正しいとされているアプローチとは違うアプローチをとれる。これだけ環境の変化が激しい時代だから、いい意味で常識がないことが強みの一つです。
2つ目が、勘所が良い。

中北:勘所が良いというのは具体的にどういうことでしょうか?

田中:感覚的な話でいくと、普通の人はあるものの真ん中をとってしまう。中北くんは重心、押さえなきゃいけないところが本能的に分かる。
ビジネスシーンで言うと、お客さんの言葉だけでなく、表情とか、リアクションとか、社内の人間模様とかを捉えて、言いたいことを察知する力だと思います。想像力もあって、目の前の担当者の方は、きっと上司からこう言われている、こんなプレッシャー受けている、っていうことも含めて商談を進め成果まで持って行くことが出来る。そういう意味で勘所が良いんです。

売れる営業パーソンは、相手の後ろにいる上司だったり、他部署、社長っていう背景や奥行まで読むんですが、それに近しいものを本能的に持ってる気がします。

あとは、ビジネス経験があると相手をビジネスパーソンとして見ちゃうけど、いい意味でビジネスの常識がないから、相手を一人の人間として見るんですよね(笑)。ビジネスマンとして普通持っているような先入観がない。ビジネスでない世界から来た人の強みです。

ビハインドを乗り越える上司のサポートが必要


―逆に、中北さんの課題は何でしたか?

田中:2つあって、転職者、特にビジネス以外の世界から入ってくる人は基本的にそうだと思うのですが、1つ目は、社内のコミュニケーションが下手。これは、ビジネスマナーがないこともそうですし、社内のネットワークも少ない。中途社員=使える社内ネットワークが少ない人は、プロパーで入っている人とはスタートラインが違う。そこは上司がサポートしないと、プロジェクトを前に進めるとか、仕事を調整するときは難しい。周りの人が他部署の人とつないであげるっていう責任があることを認識しておくことが大事です。

2つ目は、数字を読み取ったり、本を読む力と習慣ですね。当時の中北くんは得意じゃなかったですね(笑)

―育成するときに課題に感じたことはありましたか?

田中:課題は特になかったですね。意識していたことはあって、早い段階で小さな成功体験を早く積むこと。なるべくがちがちに縛るよりも、成果のためにできることをサポートできればいいなと思っていました。さっきの東新宿の交差点の話もそうだね(笑)

―のびのびやらせるスタンスだったんですね。そう考えると、中北さんは自発的に動いていたんですね。

田中:そうですね。常識にとらわれないから、こんなやり方もするんだ!?っていう驚きもありましたよ。
例えば、物流の会社がクライアントの時には、現場の理解のために、リンゴの袋詰めをする工程に1日間参加させてもらって来たりとか、マッサージ屋さんの提案するために3店舗ほど接客が「上手な人」「下手な人」「普通な人」をヒアリングして実際に施術して貰ったりとか(笑)

中北:そうでしたね(笑)どんな気持ちで仕事しているのかを知りたいんですよね。例えば、職場の課題を知るためのアンケートを取ったときに「職場が暑い」と書いてあった時に、我々コンサルタントから見たら大した問題ではないと判断し見落としてしまう。でも蓋をあけてみたら、工場で働いている人って室温50度の中で働いていたりして、彼らからすると死活問題なわけです。これは実際に行ってみないとわからないですよね。

―元お笑い芸人の方を受け入れる企業さんへのメッセージはありますか?

田中:先程もお伝えしましたが、「常識を壊せる」ということは、今の企業に必要な人材像のNo.1だと思います。いろんな会社でイノベーションを起こせる人材が欲しい、育成したいと言っています。立ち返って考えてみると、そういうことが出来る人って常識を壊せる人だと思います。それが出来る人はいい意味でビジネスを知らない、だけど人間のことをちゃんとわかっている人。商売は、人の困っていることに対してソリューションを当てていくものだから。

マネジメントする上司の方にとっても、これから外国人とか色々な人が部下になる時代。私は、自分と違うタイプの人をマネージすることが、とてもいい勉強になりました。自分とは異なるタイプの人を部下につけてもらうことはすごくハッピーなこと。そう思えるなら良いですが、もし、思えないなら、あまりお勧めはできないかもしれません。

―これから働く元お笑い芸人の方へメッセージをお願いします。

田中:思ったことをちゃんと話したほうがいいですね。これは面白いとか、おかしいとか、もうちょっとこうしたいとか。それを閉じてしまうと、良い意味での「常識がない」っていう元お笑い芸人バリューが消えてしまいます。

 

―本日は、貴重なお話しをお伺いさせていただき、ありがとうございました。

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