インタビュー
ライオン株式会様「イノベータートークセッション~事業創出のための自己分析~」事例のご紹介
ライオン株式会社 様
https://www.lion.co.jp/ja/
[会社プロフィール]
1891年10月創業。創業以来、「愛の精神の実践」を社是として、「より良い生活習慣づくり」を通じて、人々の毎日の健康や快適な暮らしに貢献している。変革に向けた動きを加速させるために2030年に向けた新経営ビジョンとして、『次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ』を掲げ、社会およびお客様から必要とされ、持続的に企業価値を向上させるために方向性を明確にし、その実現に向けた新中期経営計画を策定している。国内外において、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上や健康寿命の延伸などヘルスケアに対するニーズが高まる中、新たな取り組みにチャレンジしている。従業員数:連結:6,941名、個別:2,727名(2018年12月31日現在)
[導入サービス]
・イノベータートークセッション~事業創出のための自己分析~
(新規事業創出・起業家支援講演)
[実施概要]
社内新価値創造プログラム『NOIL』の一環として、これから新規事業を提案していく方々に対して、株式会社俺を起業した想いや背景、実現していきたいことについて、中北自身のリアルなエピソードと簡単なワークを取り入れ講演として実施。
[スピーカー]
ライオン株式会社
ビジネス開発センター
ビジネスインキュベーション
部長
藤村 昌平様(写真右)
ビジネス開発センター
統括部事業支援チーム
猪谷 祐貴様(写真中央)
株式会社 俺
代表取締役社長
中北 朋宏
事業創出のドライバーは『自己開示』と『心理的安全性』
~自分で挑戦を決め、それを応援できる風土をつくる~
ー 本日はどうぞよろしくお願いいたします。改めてとなりますが、貴社の組織風土と、社内新価値創造プログラム『NOIL』をはじめた背景について教えてください。
藤村様:弊社は、今年で創業128年を迎えます。創業当初からモノを作って売るビジネスを続け、100年以上に渡ってメーカー業で拡大してきた企業です。組織風土としても、既存事業を維持拡大させていくために、効率を上げて生産性を高め、オペレーションをどう洗練させていかということが得意な風土と言えます。
『NOIL』をはじめた背景は、市場環境の変化に対応するためです。弊社の売上比率は国内が約7割を占めています。どんなにがんばっても歯磨きを1日10回する人はいないように、日用品を取り扱う以上、人口減少がビジネスの規模にダイレクトに影響してきます。このままいくと、どんなに良いモノを作っていったとしても生産量は下がっていくことが想定されますし、同じパイの奪い合いとなり、ビジネスが伸びていかないことが目に見えています。その状況に対して、会社の新たな可能性を広げるために、新価値創造プログラム『NOIL』をはじめました。実際にスタートしたのは、2019年4月からとなります。
ー ありがとうございます。そういった背景がある中スタートした社内新価値創造プログラム『NOIL』とは、どのような内容なのでしょうか。
藤村様:NOILは全社から事業アイデアを公募・選抜し、投資家などを含む社内外の審査員に対して事業提案を行い、採択されると提案者が次年度から新規事業推進部所に異動し、専任で事業推進する一気通貫のプログラムです。チームではなく単独で応募し、1次審査通過後は社内外のメンターと一緒にアイデアをブラッシュアップしながら最終審査に臨む流れで約半年間かけて走ります。
ー 今回、そのようなプログラムの中で、中北さんの起業の話を聞きたいと思われたのはなぜでしょうか。
猪谷様:4月当初は、このプログラムへの応募を迷っている人の背中を押すことが最大の課題でした。そのためには、なぜ自分が事業を創りたいのかを明確にする必要があるため、社内に起業家をお招きして、考え方やマインドセットについてお話し頂く機会を設けました。
中北さんとはたまたま飲み会で知り合ったのですが、その際に株式会社俺の事業をお伺いし、ご自身のキャリアと事業が直結していて、かつオリジナリティが極めて高いことに非常に大きな魅力を感じました。しかも、芸人×人事という一見異色な経験を組み合わせることで、新しいマーケットを創出されています。これぞイノベーション、これぞ起業家マインドセットだと興奮して知り合った当日にご講演のオファーをさせて頂きました。
まずは、自分がどういう人間かを知り周囲に伝えられることが大事
ー ありがとうございます。実際に、講演を実施してみた率直なご感想について教えてください。
藤村様:中北さん以外の起業家の方にも何人かご講演頂いたのですが、その際の参加者の感想は、『勉強になった』や『パッションがすごかった』といったコメントが多かったのに対し、中北さんに対してはこれらのコメントに加えて『楽しかった』や『面白かった』という言葉が必ず使われていました。随所に笑いのポイントを挟む中北さんならではの感想だと思います。特に評判だった時間は『自己開示』のワークです。新規事業開発のドライバーとして『自己開示』と『心理的安全性の醸成』が非常に重要であると言われている中で、弊社はまだまだその認識が薄いのですが、このワークのおかげで参加者は新しいことを生み出すために必要なこととして体感することができました。
ー 好評だった『自己開示のワーク』とは、どのような内容だったのでしょうか?
猪谷様:中北さんが突発的に決めた他愛もないトークテーマについて自分はどう考えるか、数秒以内に近くにいる人と話すというワークだったのですが、隣の人の声が聞こえないくらい盛り上がりました。私自身、新規事業開発を推進するにあたり、「自分とはこういう人間である」ということを周囲に伝えられるかどうかが物凄く重要だと痛感したことが多々ありました。そうでないと、他の人を巻き込めないし、人となりがわからないと本当の意味で共感してもらえないからです。このような自己開示のトレーニングもツールとして必要だと思っていたので、すぐにこのワークをNOILのイベントにも取り入れさせて頂きました。
藤村様:このプログラムは、基本一人で新規事業を考え進めていくので、まずは、オーナーシップを立たせたいと思いました。弊社のメンバーはチームや組織で仕事を進めることに慣れていますので、「あなた」がやりたことを「あなた」の責任で進める、その覚悟がありますか?ということが問われます。もちろんメンターや、協力してくれるメンバーはいるのですが、自分がどんな人間でなぜこの事業をやりたいのか、想いを周囲に自己開示していくことが必要になってきます。
ー なるほど。この取り組みによって、どのような変化を期待しましたか?
藤村様:参加者、あるいは動画(講演の録画を社内配信しています)の視聴者に、内省を徹底的にして頂くことを期待していました。実際、講演後に参加者に対して、自分の得意なこと、苦手なこと、好きなこと、嫌いなことは何か。自分がビジネスパーソンとして、1人の人間として今後どうなっていきたいのかをしっかり考える時間を作ることを提案させて頂き、多くの参加者がこれを実践してくれました。
ー 印象に残ったエピソードはありましたか?
猪谷様:中北さんが投資家に出資を要求するプレゼンを行った際に提示した損益計算書(PL)のお話が印象的でした。3行程度で構成され、合計金額すら書いていない状態で提示したにも関わらず、満額出資を獲得したという我々大企業に所属する身からすると驚愕のエピソードです。単純に笑えるというのもありますが、投資家が重要視していることがPLではなく、“提案者の熱意とパーソナリティ”だということがわかるエピソードだと思います。
弊社では、何を実現したいのか、なぜ自分がやるのかという想いよりも、事業の数字だけを重視するような考え方を持つ人もいます。そういった堅い側面に一種の風穴を開けられた気がして、非常に痛快でした。
「失敗しても、その挑戦心と経験を兼備した人材を欲しがる企業が無数にある」
ー 今回、ご依頼頂いた一番の理由は何だったのでしょうか?
猪谷様:中北さんであれば、新規事業開発に興味があるけど躊躇している社員の背中を押して頂けると思ったからです。ご講演の中でも躊躇している人の気持ちに寄り添い、何度も「難しく考えるな」とおっしゃって頂きました。また、起業はノーリスクハイリターンだというお話を論理的にお伝え頂きました。
一番刺さっていた言葉が、『成功したら自分の思い通りの事業を推進できるし、失敗してもその挑戦心と失敗経験を兼備した人材を欲しがっている企業が無数にあるから大丈夫だ』です。この言葉のお陰で、『NOIL』への応募者が爆発的に増えたことは間違いないです。
ー ありがとうございます。このような取り組みは、どんな組織にお勧めしたいですか?
藤村様:全社的に新規事業開発の機運を作りたい組織にぜひお勧めしたいです。方法論は書籍やセミナーで簡単に手に入りますが、人のマインドセットが変わる機会はそう簡単には見つけられません。中北さんのご講演には人を変えるチカラがあると思いますし、この講演の甲斐あって、『NOIL』への応募件数は目標に対して1.5倍を達成しました。
― 『NOIL』をやられてみての感想や、来期に向けて取り組みたいことがあれば教えてください。
猪谷様:1年目としては、想定よりうまくいったなというのが率直な感想です。応募者が集まったこともありますが、この取り組みに対して多くの社員が応援してくれました。この雰囲気を継続していくためにも、今期は応募するためのきっかけを増やしていきたいと思っています。『NOIL』にかかわることで、勉強できるな、良い経験ができるなと思えるような企画をどんどん打ち出していく予定です。
ー 今後、どのような組織をつくっていきたいですか?
藤村様:自分で新しいことへの挑戦を決め、それを周囲が応援できる風土を作っていきたいです。その新しいことが起業である必要はありません。新しいスキル、経験、人脈、なんでも構いません。『自分で欲しいものを考え、自分で獲りに行く』という人間が本来持っている当たり前の感覚を取り戻す必要があると考えています。そのためには中北さんのように、個として自身の人生をしっかり内省し、実現したい状態を明確に定め、自己開示による周囲への心理的安全性付与を忘れずに、嬉々として働き生きるマインドセットを身に付けることが必要だと考えております。大前提として我々事務局がそのマインドセットを体現する必要がありますので、今も定期的に中北さんにお会いしてそのパワーを頂戴していますし、今後とも末永くお付き合いさせて頂きたいと考えています。
ー 本日はお忙しい中、貴重なお話をお伺いさせていただきありがとうございました。こちらこそ、今後ともよろしくお願いいたします。